7月31日総務省で開催されました「電力線搬送通信設備に関する研究会」で現在のモデムや電力線の架線状態では、PLCが航空管制や短波放送などの無線送信に有害な混信源となり得ることから使用周波数帯を拡大することは困難という結論が出されました。
この研究会に携わった多方面の方々のご協力に対して、また、非常に献身的なご努力を頂いたアマチュア無線家の方々に対して厚く御礼申し上げる次第です。
この研究会は4月30日に発足し、37団体と思いますがそれらの団体から意見を聴取したわけです。これには賛成反対と色々の方々がおられましたけれども、私どもが聞いている範囲では、短波帯でPLCを使用する事はいかがなものかとの意見が大半であったように感じております。
JARLとしては、1月26、27日のARIBとの合同実験で、モデムからの漏洩雑音が非常に大きいという実態を把握し、この実験を踏まえて4月3日に開催した第3回電磁環境委員会でさらに検討を行いその事実を確認し、4月27日に開催した第451回理事会においてアマチュア無線に与える影響が非常に大である。従ってJARLはこの件について明確に反対であるとの立場を出しました。
一方、諸外国の実状について百聞一見にしかずということで、JA1AYC松本理事をドイツへ実態調査に派遣しました。
丁度「ハムラジオ2002年」が開催されており、これには世界中からアマチュアの方が数万人集まります。ここで、24カ国が集まってPLCのフォーラムが行われ、諸外国の実状もわかり、それらの結果から、欧州の国々も検討を進めているというような段階で、雑音のレベルをどこで止めるかと言うことについてまだまだ論議が必要だというようなことがわかりました。
また、JARLとしましては、日本医師会などにもPLCの実状をお話してご協力をお願いしました。日本医師会からも医療用機器への影響は人命に関することだからもっと慎重に審議してもらいたいというような回答を頂いてきました。
一般的にIT革命というのは、錦の御旗みたいになっており旧来の慣習にとらわれずにIT革命をやれとか、反対するのはアマチュア無線家のエゴではないかとか、環境の規制緩和もまた一つの錦の御旗で、微弱なる電波を規制緩和してもう少し電力を上げて使わせてもいいのではないかと言うようなことがありました。そうなると日本の空はめちやくちゃになるという信念を持って対応致しました。
そして驚くほどの団体が短波を使っており、JARLとしても各団体に呼びかけて積極的な意見を出していただきました。
7月22日〜24日かけて行われた実験では、モデムから156m離れた地点において6Mhzの短波放送がマスクされるほどの漏洩雑音がでていること、また、400m離れている地点でも影響を確認したというようなことで、これらを踏まえて総務省、研究会に意見及び資料を提出した次第でございます。
そして、7月31日の研究会で現在においては短波帯の周波数を使うことは困難であるとの結論がだされました。これは我々にとって大変喜ばしいことであります。総務省ご当局並びに研究会の皆様の賢明なご判断によるものと厚く感謝している次第でございます。